好き
「好きよ」
 もう何度も何度も告げた言葉。
 初めての時のように心臓が壊れそうなドキドキはないけれど。
 でも、声にする時に感じる愛しい想いはさらに募って増えたと思う。
「好きよ」
「あァ?」
 まっすぐ目を見つめて言うわたしに、彼は気むずかしそうに眉間にしわをよせてかえす。
 不機嫌そうに見えるけれど、それが照れ隠しなんだと知っているから気にしない。
 わたしはこれから見られるであろう彼の反応を考えて、思わず笑みがこぼれた。
 それを見た彼の眉がぴくりと動く。
 でも、わたしの方が早い。
「すきすきすきすきすきすきすき…」
 とりあえず息が切れるまで、言い続けてみる。
 彼は何か言いかけて口を少し開けたまま、あっけにとられたようにわたしを見た。
 うん、満足♪
「…なんのつもりだ、そりゃ」
「十回は言ったわよね」
 思い返してみるけれど二十回近くは言えたんじゃないかしら。
 けっこう快挙だわ。
「耳にタコができるくれえは言ったな」
 彼は、はーっと脱力感を感じさせるため息でこたえた。
「だって、一割なんだもの」
「?」
「わたしが十回『好き』って言ってやっと一回返ってくるって感じじゃない」
 自分の気持ちを言葉にして表すことが少ない彼だと知っているけれど。
 でも、やっぱりちょっと不公平かも、と思ったのよね。
「ほら、だからね♪一回は言ってくれるよね」
「………」
 手で額を押さえて、彼はもう一度、めいいっぱいため息をついた。
「もう、そんなにあきれなくてもいいでしょ…」
 ちょっとばかかなあとは思ったけれど。
 でもでも、逆にすごくいい考えかも!と思ったのよ。
 そんな風にされたら、なんだかはずかしくなってくるじゃない。
「ハイハイ」
 ぽんぽんとてのひらで頭をたたかないでよ。
「むー」
「バカな子ほどかわいいって昔から言うけどマジだな」
 髪をくしゃくしゃにするように頭をなでてくる。
 まるで子供にするような仕草。
 彼に触れられるのは好き。
 でも、バカにされるのにはムッとするわ。
 キッと顔を上げて、何か言おうと口を開きかけ…
「…ッ」
 わたしは思わず息を止めた。
 彼の瞳が近い。ううん…近すぎる。
 吐息がかかるほどの至近距離。
 彼は意地の悪い笑みで唇を歪めて…でも、
「好きだ」
 鋭く真剣なまなざしと声がわたしの心を奪う。
「そんなおまえを好きなオレもたいがいバカだけどな」
 低く呟いて、彼は苦笑する。

 たぶんきっと、そんなあなたを好きでたまらないわたしも同類ね。


[end]


らぶらぶヒルまもv                               ..2005/05/21

掲示板より転載 (2005/08)