[髪]
「なあなあ」
「なに」

気づけば、ふとそこにいる。
ごく当たり前のようにすぐ近くにいて、無遠慮にヤツは手を伸ばしてくる。
今日は、私の、髪に触れた。

「髪、結んだりしねえのか?」
「結ぶほどの長さじゃないわ」
「そりゃ、おめえのさらさらヘアーはそのまんまでも十分、見栄えがいいけどよ」
「なら、問題ないでしょう」

任務に差し支えがあるわけでもなし、髪型など、特に凝って手を加えるほどの必要性を感じない。

「短くてもそんだけの長さありゃ、編み込みくらいできるだろ」
「?」
「似合うと思うぜ」
「必要ないわ」
「ま、ものは試しってことで」
「必要ないって言ってるでしょっ」
「まあまあ、オレがちょちょいとやってやるから」
「バトーっ」

しつこい!と相手の手を払いのけようとしたら、逆にその手をつかまれた。

「おいおい、あぶねえな。おめえの手はキレイなくせして、すげえ凶器にもなるんだぜ。気をつけてくれよ」
「…あのね。この場合、気をつけるのはあんたの方でしょうが」

なぜか、どっと疲れに襲われたような気がして、ため息がこぼれた。
怒る私を前に逃げもしないコイツの相手は正直、疲れるものだった。
たとえ本当に殴っても蹴りを入れても、コイツは離れない。

「両サイドに三つ編みを編み込むってのはどうだ」

楽しそうな笑みを浮かべて、ヤツは言う。
その無骨な指がすでに髪を編み始めているのを感じながら、私はため息混じりに応えていた。

「好きにしていいわよ」

抵抗するのは、たぶん無意味。
楽しげな鼻歌交じりにヤツは私の髪を編んでいく。

私は抵抗する必要性をそこに感じなかった。
むしろ、感じる心地よさに、少しの安堵と、少しのとまどいをおぼえるだけ。
いつから、なんて知らない。
気づけばいつの間にか、そうなっていた。

「ほら、出来たぜ♪」
「………」
「すげえ、かわいくなってるぞ。少佐」

でも、とりあえず…、
こんなバカを言うヤツは殴っておくことしか、今の私には思いつかないのだ。


END

久々、攻殻☆
無遠慮であったかく側にいてくれるバトーさんって良いなあv
…なんて、惚れてます。
                    ..2005/06/02

掲示板より転載 (2005/08)