| 【暑い日】 |
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| 「おまえなあ、その格好なんとかならねえのか?」 すげえ暑苦しいぞ。 その言葉にバレリアは自分の服装をちょっと見下ろし、肩をすくめた。 真紅の軍服は長袖に詰め襟仕様だ。生地自体は冬用に比べて薄くなっていたが、相手が言いたいのはそういう問題ではないだろう。 暑い夏の日が続くようになってから、誰もが一度はそんなコトを言う。 いや、今、彼女の目の前にいる男に限っては一日一回といった方が正しかったが。 それでも彼女は、ここで引くわけにはいかないとキッパリ言い切る。 「いくら暑苦しいと言われても、これを変えるつもりはない」 帝国軍に従軍していた時から軍服着用は彼女にとってごく当たり前のコトで、しかも気持ちを引き締めるのには効果的だった。 それに多少暑いからという理由で軍服を脱ぐのは精神鍛錬の不足をさらけ出すようでバレリアは好まない。 ただ問題は『暑苦しい』と周囲の人間が不快な気分を味わっているのかもしれないというコトで。だからこそ、ふだんは下ろしている髪を紐で束ねたり努力してはいたのだが…。 「まだ文句があるのか。おまえは」 呆れたように言って、彼女は男を−−−ビクトールを見た。 するとビクトールは当たり前だろうと言わんばかりに胸を張る。 「やっぱり夏っつたら、もっと涼しそうで腕とか足とか出るような服が一番だろーが!せっかく夏になったってのにいつもとおんなじ軍服じゃあ、ちっとも…」 思わず勢いにのって本音をこぼしかけ、彼はそこで言葉を飲み込んだ。 「ちっとも、なんだ?ビクトール」 きらりと底光りする瞳にビクトールは一歩後ずさる。 「私は真面目に考えていたというのにおまえというヤツはー」 容赦のないこぶしの一撃をビクトールは顔を引きつらせながら受け止めた。 「ちょっと目の保養くらいいいだろーがっ」 「いいわけがあるかッ!!」 「そんならせめて上着のボタン外すとかな」 そう言いながら、何気ない仕草でボタンを外しにかかるビクトールにバレリアは真っ赤になる。 「ビクトールッ」 暑苦しいのは服装などではなく。 じゃれ合いにも似た、そんな二人のやりとりだったにちがいない。 |
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| END |