戦士の道を選んだ時に決意したことがあった。
「私は決してためらわない」
戦場で剣を振るう者として。 
己の心が惑い、立ち止まったりせぬように。
生きて愛する家族の元に帰るために。
そう誓いを立てた。


『迷わず、人を斬るために』


そして。
逃れることのできない罪悪感を知った。


己の罪深さを誰より知るからこそ。
逃れようとは思いもしないが。

それでも。
胸の苦しさに。
どうにもやりきれない想いを抱く時がある。




「バレリア…?」
怪訝そうに名を呼ぶ声に彼女は目を向けた。
「ビクトール」
口にした響きに思わず安堵する。
「どうかしたのか?」
心配するような眼差しにふっと心が軽くなる。
「いや…なんでもない」
自分と同じ戦士である男の腕はひどくあたたかかった。


それは
自分と同じ
血塗られた手だというのに。


『不思議なほど愛おしいと感じる』



だから。
もう一度誓うのだ。
「私は決してためらわない」


生きてこの腕に還るために。
この大切な存在とこれからも共に在るために。



それが罪深き己のエゴだと。
誰よりも自分が一番よく知っているから。



『今、ひと時の安息を』




 
END