人魚姫T-【〆】
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「ヘリオンさん!!」
 深く暗い海の底。
 その静寂を破る大声に、呼ばれた方も驚いて目を剥きました。
「姉さんは帰ってきた!?」
 明るいオレンジ色の尾で激しく水を掻きながら騒ぐ相手に、鋭い一喝が飛びました。
「うるさいよ!テンガアール」
 しかし、そんな言葉は通用しません。
 焦りで押さえきれない大きな声に「ごめん!急いでるんだ」と返され、ヘリオンはやれやれとため息をつきます。
「バレリアならついさっき帰ってきたよ。で、あんたがまだだってわかって、慌てて出て行ったところさ」
「じゃあ、無事なんだね!?よかった」
「わかったなら、おとなしくここで待っておれ。あんまりバレリアに心配かけるんじゃない」
「う、うん…そっ、それはよくわかってるんだけど」
「わかってるなら、少しはその無鉄砲さを直すことだね」
「ええと、あ、あのさ…ヘリオンさん」
「なんだい」
 これ以上、何かあるのかと不機嫌そうに振り返ったヘリオンに、テンガアールは勇気を振り絞って言いました。

「あのね、ぼくが人間になる薬がほしいって言ったら、怒る?」

 と。

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END