| クリスマスとは異国の宗教によるとどうも特別な日、らしい。 別に信者でもない自分にとってはたいして意味のないコトではあるが。 暖炉のそばでケーキにシャンパン。 そして、大切な人にささやかな贈り物を。 そんな恒例行事は寒い夜をあたたかい想いで染めてくれる。 「あいつには何がいいだろう…」 呟きに、同じように書庫で本を選んでいた青年が顔を上げる。 その拍子に額に巻かれた青いバンダナの端が揺れた。 「ん?なんか言ったか?バレリア」 「いや、なんでも…」 ない、と言いかけて、彼女はふと相手を見返す。 「そうだ。フリック殿なら知っているかもしれないな」 「知ってるって何をだ?」 あんまり期待されても困るぞ。 肩をすくめるフリックに彼女はほんの数瞬迷ったすえに口を開いた。 「あいつの欲しいものなんだが…」 「……………」 わざわざ名前を言わなくても、彼ら二人の間で”あいつ”といえば一人だけ。 「なんで俺に聞くんだよ」 彼はため息混じりに尋ねる。 「それが…」 ずっと考えていたんだが、どうにも思いつかなくて。 本当に困っているんだとばかりにバレリアは表情を曇らせた。 「そんなもん、簡単だろうが」 酒とか食い物とか、服、剣の手入れに使う道具etc…。 なんでもアリだ。 そう言うフリックに彼女は苦笑する。 「そういう必要なモノはふだんやっている」 なんでもないコトのように彼女が言い返した瞬間、フリックはがくっと肩を落とした。 「ノロケかよ」 「別にそういうつもりはないが…。そう聞こえたか?」 不思議そうに。 また照れたように問い返すバレリアに、彼はもう一度ため息。 「ま、いいけどよ…」 考えてわからないなら、本人に直接聞けばいいだろ。 「うー、ん。やっぱりそうしたほうがいい、か」 意外な贈り物で相手を驚かせるという楽しみはなくなるけれど。 まあ、相手が本当に欲しいモノを贈れるならそれが一番なのは確かだろう。 「今度、聞いてみることにする」 ありがとう、フリック。 * 「なあ、何がいいと思う?」 真剣に本を読んでいることなどおかまいなしに声をかけてきた男に、彼は眉をしかめた。 「おまえな、俺は本を読んでるだろ」 「そんなもん、話の後でもいいじゃねえか。フリック」 言葉と同時に手から本がひったくられる。 「返せよ。ビクトール」 「すぐ返すって」 だからな、オレの話を聞けって。 「話?」 「あいつのクリスマスプレゼントに何がいいかってことだよ」 わざわざ名前を言わなくても、彼ら二人の間で”あいつ”といえば一人だけしかいない。 思わず、フリックはため息をついた。 「あっ、てめえ、くだらねえこと聞いたと思ってやがるなっ」 憤慨したように言うビクトールに、フリックはどこか投げやりな態度で言葉を返す。 「今日、二度目なんだよ」 「へ?二度目?」 「おまえとおんなじコトを聞いてきたヤツがいたってコトだ」 「へえ。みんなプレゼントにゃ気ィつかうもんなんだな、やっぱし」 誰だ?そいつは。 興味本位の問いにフリックは眉をしかめた。 「……………おまえのコトも言いふらしていいんなら、教えてやるが」 するとビクトールは少し慌てた様子で手を振った。 「あ、い、いや、そうだな他人のコトはどうでもいいんだよ」 わざとらしい咳払いまで加えて、表情を改める。 「でな、おめえはどう思う?」 「そんなもんな…」 酒とか食い物とか、服、剣の手入れに使う道具etc…。 ああ、それにアクセサリーとか。 なんでもアリだろうっ。 そう言うとビクトールは心底困ったように頭を掻いた。 「だが、あいつは必要なモノは全部自分で手に入れるヤツだからよ」 それに装飾品の類はそう欲しがるヤツじゃねえし。 「よーくわかってんじゃねえか」 結局はノロケを聞かせたかったわけか!? 付き合いきれない、とばかりに本を奪い返すフリックに、 「そ、そういうつもりじゃねえけどよ…」 そう聞こえたか? ビクトールはゆるんだ口元を隠すように手で覆って、問う。 「とにかくっ」 考えてわからないなら、本人に直接聞けばいいだろっ! 俺に聞くなっ!! そんな怒鳴り声もしかし、ビクトールが気にする様子はなく、 「そうか。やっぱそれが一番だよな」 すっかり胸のつかえがとれたような顔に笑顔を見せた。 「助かったぜ。フリック」 ありがとさん。 軽い足取りで去ってゆく後ろ姿を見送り、フリックは全身でため息をつく。 「この…似た者同士め」 NEXT |