「…なんかいるもんとかねえか?錬成してやるぞ」
長くなった金の髪を三つ編みした幼なじみは時々、あたしにそう言ってくる。
時々…それはつまり、旅から帰ってくるとってことなんだけど。
そういう時の私が何をしてるかといえば、機械鎧の整備とか、ばっちゃんを手伝って家事とか、あとはデンを連れて散歩とか。
「んー、そうねえ…」
田舎町の雑貨屋は品揃えが悪かったりするけれど、でも、多少時間がかかることがあっても必要なものは手に入った。
二人暮らしの家にはとりたてて今以上、必要なものはない。
わざわざ錬成してもらわなくちゃいけないくらい、欲しいものはなかった。
もっと幼かった子供の頃はよくエドやアルが一瞬でおもちゃを作ってくれるのが面白くて楽しくて、いろいろ作ってもらったのを覚えている。
この兄弟は本当にいろいろ錬成するのが大好きで、一緒に遊んでいるうちにあたしも錬成の恩恵にあずかった。
でも。
ある時を境にあたしはエドたちに錬成をあんまり頼まなくなった。
「必要なものなら今のところ間に合ってるのよねー」
だからいいよ、と返事を返すようになってどれくらい経つだろう。
特に彼らが旅に出てからは、エドの気遣いがまるであたしたちに心配かけてることへの罪滅ぼしのようでイライラしたし、宿代代わりなんてことだとしたら筋違いもいいとこで、あたしは冷たく突っぱねた。
だから、その後に一言付け足すようにしたのはここ最近のコトよね。
だって、断ると必ずエドは少しがっかりしたような顔するんだもの。
「うーん、でも、アレは欲しいかな」
「へえ。アレってなんだよ」
ほら、少しうれしそうな顔。
「今日は暑いし、かき氷が食べたいな。うちの冷蔵庫ちっさいから、そんなに氷作れないしね」
「ちっさい言うなっ!」
「何よ、冷蔵庫の話でしょ。安心しなさいって。あんたの方がちっさい冷蔵庫よりは大きいんだから」
「………ッ」
あたしが欲しいもの。
本当に欲しいのは、少し前まではごくあたりまえだった日々。
ばっちゃんがいて、デンがいて…もちろん、エドとアルもいて。
みんなが元気に笑っていられるなら、他に欲しいものなんて何もなかった。
でも、それは無理な願いで、エドを困らせるだけだとわかっているから言えない。
「それとも何?やっぱり氷なんてエドには無理だった?」
からかうように言うとムッとした顔つきのまま、「んなわけあるかよっ!」と彼は答えた。
エドが…ううん、エドとアルが氷の錬成に成功したのはもうずいぶん前だ。
水は簡単に錬成できても、氷は難しいって言っていた頃、あたしが病気になって寝込んだことがあった。
すごく高い熱が出て、あたしはしんどかったことと、あと額を冷やしてくれるタオルが冷たくて気持ちよかったことしか覚えていない。
でもあの時、実はエドたちが徹夜で一生懸命、錬成式を考えて、あたしのために氷をたくさん作ってくれたんだって…後から聞いた。
たぶんあの時の氷がそれまで彼らに錬成してもらったなかで、一番うれしくて、一番大切なものになった。
あたしがエドたちにあんまり錬成を頼まなくなったのはそれからだ。
「食いすぎで腹壊すんじゃねーぞ」
そう言って合わせた両手が光を放ち始める。
あたしのことで無理なんてしてくれなくていいの。
でも、このくらいなら許されていいと思う。
だって、ほら、エドは笑っていて、あたしも笑ってる。
こんな風に『幸せ』と思える瞬間が一番、好き。
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