触れるのも好きだが、触れられるのも好き
「耳…」 「……?」
淡い月明かりの中、ぼんやりと浮かび上がる輪郭に手を伸ばす。
ほんの少し持ち上がった掛布の隙間から冷たい空気が忍び込んだが、腕の中の彼女はじっとしたまま…しかし、少し不思議そうに私を見返してくるのがわかった。
かまわず、私は彼女のやわらかな耳を指で触れた。
輪郭をなぞると指先が固い石に当たる。
そして、固定されたピアスの金具にそっと、彼女の耳を傷つけたりしないよう気をつけながら触れた。 「君にはピアスがよく似合う」 「ロイ…?」
「私も穴をあけてみるかな」 「………」
こぼれたのはため息なのか、単なる吐息なのか。
あたたかな息が肌にかかった。
そして、彼女がわずかに身じろぐ。 「おそろいのピアスにしようか?」
からかうように瞳を覗き込みながら言うと、彼女は小さく笑った。 「あまりうれしくない提案ですね」
言葉は辛辣なようだが、口調がやさしい。
そのまま細い腕を伸ばして、私の耳を指で触れた。
外気で冷えかけていた耳に灯るような感覚で、温かな熱が伝わる。
彼女の指はゆっくりと輪郭をなぞって耳たぶまでくると、ちょうどピアスの穴をあける辺りをそっと押さえた。 「わざわざ穴をあけるなんて、もったいないですよ。私はこのままの…あなたの耳が好きです」
「そう言われるとあけられないな」
「あけないでください」 「ああ、そうしよう。…君がキスしてくれたら」
囁くと驚いたように少し目を見開く。
しかし、彼女はちょっと苦笑して、また身じろいだ。
今度は上体を起こし、ずれた掛布もそのままに私を見下ろす。
浮かび上がる影の形も私のお気に入り。
その影が静かに近づいてくる。
私の唇へ…
いや、私の耳へ。 「リザ…」
思わず笑ってしまう。 「キスしましたよ」
「ああ。…でも、私の耳はふたつあるのだけどね」
そう言うと熱を帯びたばかりの耳たぶが軽く引っ張られた。 「欲張りですね」 「ああ」
触れるのも好きだが、触れられるのも好き。
だから欲張りな要求で君に誘いをかける。
その方法を考えるのも楽しみの一つなのだと言ったら、悪趣味だと言われるのがわかるから、言わない。
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