天気予報は曇りのち雨。
しかも、その日やって来たのは雨は雨でも『大型台風』。
ここイーストシティも夕方の勤務終了時間が訪れる頃には横殴りの激しい雨と突風に見舞われていた。
「すごい嵐だな。中尉」
「そうですね」
朝から薄暗かった窓の外もすっかり夕闇が落ちて、真っ黒だ。
ただ室内の明かりを受けて、外の黒々とした木々が不気味に揺れ動いているのが見えた。
かなりの突風なのだろう。窓がガタガタ音を立てる。
しっかり締め切っているというのに風の音や、木々の葉がざわめく音までもが聞こえた。
夜勤のため出てきたハボック少尉なんて折れた傘を片手に全身ずぶ濡れで現れたほどだ。そんな中を帰るのは無謀もしくは面倒だと居残る者がほとんどで。
マスタング大佐とホークアイ中尉もそうだった。
愛犬と共に出勤してきた中尉は朝からこうなることなど見越していたかのようにブラックハヤテ号の食事、寝床の準備と抜かりがない。
そして、上官が片づけるべき仕事をまとめて用意しておくところも彼女だからこそ。逃げ場がないロイはため息をつきつつ、積まれた書類に手をのばす。
「ぼーっとしないでください。大佐」
「外は嵐だというのにここはいつもと同じか…」
「当たり前でしょう」
がっかりしたように言う上官に、中尉はわけがわからないコトをと返す。
ロイはやはりため息。
「まあ、ここでいきなり明かりが消えて暗闇になったところで君はあわてないだろうしなあ…」
「予備の明かりなら机の一番下の引き出しですから」
「雷が鳴ったところで君は顔色なんて変えないし」
「雷ごとき、いちいち相手をしているヒマはありませんので」
つれなく答える相手にロイは苦笑した。
「つまらないな」
「悲鳴を上げてあなたに抱きつけば、ご満足ですか?」
冷ややかな声音と鋭い視線で返しながらそんなコトを言う中尉にロイはまた苦笑する。
「それもいいな」
「………」
今度こぼれた中尉のため息は呆れ混じりのモノだった。
「いいかげんに…」
「でもまあ、そんな強気な君が好きなんだから仕方がない」
「………ッ」
不意打ちに思わず絶句する相手の顔を見て、ロイはまた笑った。
『そんな君だから好きなんだ』と。
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