たとえば、こんな会話は日常茶飯事。
「なにしてるんスか?」
思わず呆れて問いかける。 その先には真剣な顔で睨み合い、ジャンケンなどをしている上官が二人。
「仮眠室のベッドがひとつしか空いてなくてな」 「私はそのへんの椅子で十分構わないのだけど」 「で、わたしにベッドを使えと言うんだ。中尉は」 「大佐の体格では、椅子だとずり落ちるのが関の山ですから。そう思うでしょう?少尉」 「男としてそんなコトが許されると思うか?ハボック少尉」
ここ連日、泊まり込みで業務に追われ続けた上官たちは睡眠不足がたたってか、ひどく座った目つきで俺を見た。 きっと犯罪者だって両手を上げて慌てて逃げていくだろう迫力だ。 さすがに見慣れた俺でも油断大敵とばかりに、いつでも逃げ出せるように体勢を整えるのは忘れない。
「で?なんでジャンケンなんです?」
「お互いの譲歩の結果ということかしら」
「わたしが下にすると言ったのだが、聞き入れられなくてな」 「階級的にそういうわけにもいかないでしょう。私の方こそ下になるべきなのです」 「…というわけで、どちらが下になるかをジャンケンで決めていたところだ」 「でも、まだ決着がつかなくて」
「はあ…」
この、会話。 内容をどれだけ正確に把握できるかは、彼らとの付き合いの度合いによることだろう。 たまたま近くを通りがかった事務官が凍り付いて立ち止まったとしても致し方ないとは思う。思うが…。
「固い床なんかに寝転がったら、反対に疲れますよ」
俺は至極常識的な意見を述べておくことにした。 たとえばそれが、事務官の期待を裏切る内容だったとしても俺のせいじゃない。
ここではそれが当たり前の、日常的会話なのだから。
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