| 【猫U】
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| 猫を見つけた。 朝の出勤途中、道ばたで。 「拾ってください」の文字が書かれた段ボール箱の中にそのコはいた。 かわいそうだけど、本来ならば、無視して通り過ぎるところだ。 でも、この時にかぎって立ち止まってしまったのはその猫がとても印象的な姿をしていたからだ。 黒い毛皮がつややかなキレイな猫だった。 しかも、箱の縁にかけた前足が手袋か靴下でも履いたように真っ白だ。 これでキラリと光る瞳も黒となれば、なんとなく、立ち去りがたい気持ちにならざるをえなかった。 「にゃあ」 まっすぐな瞳で甘えるように鳴かないでほしい。 まさにこの時のような状況を後ろ髪を引かれる…というのだろう。 「仕方がないわね」 このまま置いて行って、後で後悔するくらいなら、今連れていく方が良い。 私は段ボール箱の中から、猫を抱き上げた。 「さて、これから、このコをどうしようかしら?」 私は引き取り手のことなどいろいろ考えていたけれど、それは職場で無事に解決することになった。 思いのほかあっさり片づいて、拍子抜けしたほどだ。 「あの、本当によろしいのですか?うちはブラックハヤテ号がいますが、引き取り手がいない時は私が飼うつもりで…」 「君は心配しなくていい。わたしが責任をもって、ちゃんとした飼い主を探しておこう」 やや引きつった笑顔でそう言う上官を見返し、それ以上の反論は控えることにした。 「それではよろしくお願いします」 「ああ」 真っ黒なくせに、両前足が真っ白のかわいいコはメスだった。 だから、名前をつけるなら『ロイ子』しかないと決めていたけれど。 「残念だわ。ロイ子」 自然とこぼれた呟きに、すごい顔をする人の様子がおかしくて私は思わず吹き出した。 本当に残念だけど、このコは私が引き取らない方がいいみたい、かしら。 END 以前書いた「猫」のまったく別バージョン。 中村さんからいただいた感想から、ふいに思い立ち。 でも、即興すぎて消化不良かも〜なのですけど。 「ロイ子」が出したかったんですよ(笑 ..2005/06/02
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