ため息の秋...by.ハボック少尉

舞い落ちる枯れ葉を物憂げに見上げる女性が一人。
厳しい態度に敬遠されがちだが、秋の風景と絵になるような美しさを彼女は備え持っていた。

「少ないわね…」

ため息をつく様子もまた風情がある。
東方司令部の建物の裏手、かなり葉を落とした木を背景に、たとえ箒を片手にした状況だとしても、である。

「中尉…?」
「ああ、なんでもないわ。少尉」

同じように箒を持って作業していいたオレはそんな中尉の様子に首を傾げつつ、視線を巡らせた。
少ないといっても、思い当たるのは地面に掃き集めた枯れ葉が思いのほか少なかったことくらいだろうか。
でも、3時のおやつの焼き芋を焼くくらいなら申し分ない量だと思う。
そんな風に怪訝に思っているオレに、

「ここはもういいから、少尉は仕事に戻っていていいわよ」

と、いつもと変わらぬ淡々とした口調で彼女は言った。
しかし、上官だけに掃除&おやつの準備をさせるなんて気まずくてかって出た手伝いだった。このまま帰って本当にいいのだろーか、とも思う。

「はあ…でも、中尉。焼くだけなら、あとはオレがやっときますよ?」

そう返したオレに、中尉はちょっと苦笑して、

「そうね、命をかける覚悟があるならお願いしようかしら」

口調とは裏腹に、恐ろしい言葉をのたまった。
本気とも冗談ともつかず、返事に窮するオレをおかしそうに見ながら彼女はいたずらっぽく笑った。

「これから処分するのは枯れ葉だけじゃなくて、重要書類も入っているから」

重要書類…?
そんな風に戸惑ったのは一瞬。
中尉のセリフにオレは迷わず「失礼します」と答えて背を向けた。
この場に出揃っている中でも最も重要な『条件』を思い出す。
それは、マスタング大佐が休みで司令部にいないということだ!

ならば、中尉の言う重要書類が何なのか?

なんとなくわかる気がしてオレは慌ててその場から離れることにした。
だから、結局のところそれが本当のところ何だったのかなんて知らないし。
つまりはどんなヤツが書いたものなのか、なんてことも知らない。

故に。

嫉妬深い男も何も知ることなく終わり、こうして東方司令部の平和は保たれるのであった。

END





秋ということで食べ物ネタ。
もう少し書きようがあったかなーと思ってます。最初は推理モノっぽく書き始めてたのだけど、無理でした。

ちょっとわかりにくいかも、な言い回しになってますが『重要書類』の答えは中尉宛のラブレターだったりしますヨ。
ゴミ箱とかに捨てて見られたら、差出人の生死がアブナイので。中尉はこんなことしてたりして、というのが発端です(笑

2004/4改訂up (2003/11 BBS書き込み)