通りのあちこちに灯る華やかな電飾の明かりは、一年の終わりに訪れるクリスマスというイベントを連想させる。
コムネット世界でもごく当たり前のように11月半ば頃から見られるそんな光景のなかを、あたしは弾む足取りで通りすぎた。
「早く、早く♪シンクロ〜」
遅れてついてきていたシンクロを振り返り、声をかける。
クリスマスまであと少し。
毎日カレンダーを見ながら、あと何日って数えてた。
今年のクリスマスはちょっと特別なのよね♪
「ちょっと待てよ。ユイ」
シンクロは苦笑しながらも歩むスピードを上げて、近づいてくる。
あたしのすぐ隣にいたエコが、 「シンクロ、もたもたしてるとおいてくぞっ」
腕を振り上げ、元気な声を上げた。
クリスマス準備の作業分担が決まったとき、『ユイとシンクロだけじゃ、何買ってくるか心配だよ』なんて言ってたけど、エコもきっと買い出しに行きたかったのよね。
すごく楽しそうに通りのお店を覗いてるんだもの。
いつも森のなかにいるエコだけど、たまにはこういう場所で遊ぶのもいいのかもしれないわ。
…って、そうこうしてる間に目的のお店が道の先に見えてきた。
「競走だ!ユイ」
言うが早いか、赤い髪をなびかせて駆け出すエコ。
本当に元気なんだから。
「よーし!負けないわよ」
あたしも負けじと走りだし…
『あ…』
でも、思わず、あるお店の前で足が止まってしまった。
吸い寄せられるように覗き込んでしまったショーウィンドウの中、銀色に輝くアクセサリーに目が留まる。
「ユイ?どうしたのさ」
先を走っていたエコが戻ってきて、怪訝そうに聞いてくる。
「ん…」
明るい照明の下に並べられているのはシルバー製のアクセサリーだった。
まるい羽をモチーフにしてて、シンプルだけどかわいいデザインが大人気のシリーズで、友だちの間でも時々話題になる。
おこづかいじゃ買えない値段だから見てるだけだとしても、やっぱり素敵なものは素敵なんだもの。
でも、あたしの場合はそれだけじゃなくて…
「何をしてるんだ?」
『!?』
後ろから響いてきた声に、内心どきっとする。
だって、あたしはこのアクセサリーのひとつを持っていたから。
エコがショーケースの中を指さし、 「こういうの、ユイ好きなのか?」
そう聞かれて反射的に大きくうなずいてしまったくらい、すごく大好きだった。
「うん♪だってかわいいもの。それに…」
『大好きな理由はほかにもあって…』
…って、続くはずの言葉は声にならなかった。
一瞬、ショーウィンドウのガラス越しにシンクロと目が合った気がして、なぜだか言葉が続かなかった。
「それに、なにさ?ユイ」 「ん」
でも、ここは何か言わないとだめよね!
内心の動揺を懸命に隠しながら、あたしは笑って返す。
「それにね、クラスの女の子の間じゃ、大人気なんだから」 「へえ、女の子ってこういうのが好きなんだ」
ちょっと不思議そうに銀色のアクセサリーを眺める少年に、「そうよ」と答え、踵を返した。 「さあ、行きましょ。早く買い物すませなくちゃ」
顔がなんだか熱くなってきたような気がして、あたしの歩みは自然と速くなる。
『も〜!どうしてこうなるのよ』
あたしはただ…
前にネックレスをシンクロにプレゼントしてもらって、それからあのシリーズが特別に大好きになったんだって。
ただ、それだけのことだったのに。
言いそびれちゃったし、なんだか顔が熱いんだけど。
早く、早く…
「待ってよ。ユイ」
早くいつもどおりに戻らなくちゃ!
そんなことで頭がいっぱいだったから、あたしは目的のお店さえ目に入らずに通り過ぎ、エコとシンクロを驚かせる羽目になったの。
そのせいで顔が真っ赤になったのは…良かったのか、悪かったのかはわからないけど、すごく恥ずかしかったのは本当よ。
END
「T」と関連するお話。ユイちゃんバージョンです♪
特別になる宝物ってありますよね。
ユイちゃんにとって、シンクロからの贈り物がそうなってるといいなあと思って、2001年に書いたクリスマスNOVEL「贈り物」を意識して、書いてみました。
すごく(途方もなく)間があいてるので、雰囲気とかちょっと違うかもですが、楽しんでもらえるとうれしいです(^^
.2006/09
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