通りのあちこちに灯る華やかな電飾の明かりは、一年の終わりに訪れるクリスマスというイベントを連想させる。
コムネット世界でもごく当たり前のように11月半ば頃から見られるそんな光景のなかを、オレは急ぎ足で通りすぎた。 「早く、早く♪シンクロ〜」
足取りも軽やかに、道の先で振り返った少女の髪が揺れた。 「ちょっと待てよ。ユイ」
その楽しそうな笑顔に逆らえるはずもなく、オレは苦笑しつつ、追いかける。
クリスマスツリーの飾りを買い出しにきただけでこの様子じゃ、クリスマス当日はどうなることやら想像もできない。
まあきっと、とびきりの笑顔で楽しんでいることだけは確かだろう。
そんな少女の横には、赤い髪の少年が一人。 「シンクロ、もたもたしてるとおいてくぞっ」
腕を振り上げ、えらそうに宣言する。 「はいはい」
やたらと張り切っている少年の様子に、思わず苦笑がこぼれた。
クリスマス準備の作業分担が決まったとき、『ユイとシンクロだけじゃ、何買ってくるか心配だよ』なんて文句を言っていたが、なんてことはない。自分も買い出しに行きたかっただけなのだ。
けっこうかわいいところもあるじゃないか、エコのやつ。
元気よく、「あっちだ」と目的の店のある方へと駆けていく二人組をオレは追いかける。
ユイと二人きりで買い物、というわけにはいかなくなったが、仕方がない。
まあ、ユイもエコも楽しそうだし、これはこれで悪くない。 『?』
ツリーの飾りを買う店まではまだ距離があった。
なのに、なぜかそろって立ち止まり、通りに面したショーウィンドウを覗き込んでいる二人の様子にオレは内心、首を傾げた。 「何をしてるんだ?」
追いついて、二人の後ろからショーウィンドウの中を覗き込んだオレは、 「…っ」
思わず出そうになった声をなんとか、こらえた。
明るい照明の下に並べられているのはシルバーのアクセサリーだった。
まるい羽をモチーフにしたシンプルなデザインが人気のシリーズで…実は、今年のユイへのクリスマスプレゼントもこれにしようかと密かに思っていた代物だった。
なぜ、こんなところにコレが!ととっさに思ったが、人気商品なのだから、アクセサリーショップの店先に並べてあるのは当然なのだろう。
そのひとつを指さし、エコが聞く。 「こういうの、ユイ好きなのか?」
するとユイは迷わず笑顔で大きくうなずいた。 「うん♪だってかわいいもの。それに…」
それに、と続きかけた言葉がふいに途切れ、一瞬、ショーウィンドウのガラス越しにユイと目が合った気が、した。 「それに、なにさ?ユイ」 「ん」
ユイは小さく笑って、 「それにね、クラスの女の子の間じゃ、大人気なんだから」 「へえ、女の子ってこういうのが好きなんだ」
ちょっと不思議そうに銀色のアクセサリーを眺める少年に、「そうよ」と答え、踵を返した。 「さあ、行きましょ。早く買い物すませなくちゃ」
再び、軽やかな足取りで歩き出したユイに負けじと少年も駆け出す。
そのとき、オレを見上げた大きな目は何かの合図でもするように軽く片目をつぶり、その唇が声なく動いた。 『だってさ』
そんなエコの様子にオレは言葉も出ない。
元気よく駆けていく二人をぼんやりと見送りながら、考える。
買い出し班をオレとユイに決めたのは…アンティだ。
買い物をする店を指定したのも、彼女だった。
店が決まっているから、ユイとここを通ることは必然だったわけで…。
連想ゲームのようにどんどん追求してしましそうになる思考を、オレは無理矢理ひきとめた。
とりあえず、『オソロシイ』という言葉を『味方で良かった』という言葉に変換しておくことにする。
思わず、深いため息がこぼれてしまったのは仕方がないだろう。 「まあ、でも…」
これで決定、だな。
ショーウィンドウを振り返り、小さなアクセサリーのひとつに目を留める。 『ユイは喜んでくれるだろうか…』
それは当日になるまでわからないが。
喜んでくれると、いい。 『その前に…』
まずはクリスマスツリーを仕上げないとな。
すっかり見えなくなってしまった二人に追いつくために、オレは駆け出した。
踏み出す一歩が、いつになく軽かった。
END
コレユイサイトさんのクリスマス関係の絵に触発されて、書いてみました♪
実はここで出てくるアクセサリーは2001年に書いたクリスマスNOVEL「贈り物」と関係しています。
今回のシンクロってば、やんちゃな弟妹を見守るお兄さんになってますが、ふだんはそういうポジションにいる人かな〜と思いますv
.2005/12/04
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