明るい日の光が、あたたかく降り注ぐ。 ゆるやかに吹き抜ける風には花と緑の香り。
そして。 ふわりと金色に輝いて見える毛先。
いつもはもっと落ち着いた色をしているのに。 明るい輝きが、ソレがとてもやわらかいものであるというようなイメージまで運んでくる。
ふわふわ、きらきら、と、誘う。
手をのばせば容易に届く、ほんの数十センチの距離で。 『触れてみたい…』
という気持ちに、負けた。
*
手が触れた瞬間、 「なっ!」
びっくりして反射的に、というように相手が上半身をのけぞらせるから。 その驚きぶりに、自分も一瞬息が止まるほど驚いた。
「ど、どど、どうかしたか?ユイ」 どもる声はまさにその心情を表しているようで、それほどのコトを自分がしたのかと思わず言葉が詰まる。
「………えっと、その…」 人型ではなく、またまた狼の姿になっているシンクロ。
いつもは固そうなその毛皮が、今日は明るい光を受けてなんだかとてもやわらかそうに見えたから。
だから、なんとなく…触ってみたくなったのだけど。
「あのね、シンクロ…」 「…?」 「その………」
別に。 悪いコトをしたわけじゃないハズだったけれど。
「…っ、い、糸くずがついてたからっ。とってあげようかと思って」
所在なげにしている自分の手を勢いよくぶんぶん振って、口から出たのは苦し紛れの言い訳じみた言葉だった。
声はぎこちないし、心臓の鼓動が早くなってくる。 『なんでこんなウソ…』
ウソをつく必要なんてなかったハズなのに。
自分でもわけのわからない行動に、うしろめたさなんてものを感じて、相手の目を見返すことができない。
どうしようと自問ばかりが頭の中でぐるぐるして…。
でも。
「そうだったのか。ありがとうな、ユイ」 彼はちょっと照れくさそうに笑って、それ以上は何も言わなかった。
だから、あたしも頷くだけで何も言わない。
触れたのはやわらかくてあたたかい狼の毛皮。
思っていた以上にふわふわしている感じで、心地よくて。
もっと触れてみたかった。
…なんて思ったんだけど。
それを正直に言うことができなかったのは、どうしてだったのかなあ。
END
ちょっと遊び心で、出だしを書いてました☆
誰の心境かな〜?って、当たりハズレ要素有り(笑
春の4月に書いてて、なんだか違うようなーで、お蔵入りしてたのですが…。
改めて読み直してみて、別に大丈夫かなあ、と思ったので蔵出し。
季節はずれなのがすみません(^^;
.2006/9/3
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