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ざくざくと音がする。
緑深い森の中。
ともだちの恐竜の頭にのってパトロールしていた少年は、音のする方へを大きな目を向けた。
まるですべり台をすべるように、恐竜の首を伝って地面におりる。
目の前の地面には大きくて深い穴が開いていた。
そこからざくざくという音と共に、土がかき出されている。
「んー?そこにいるの…ユイ?」
土をかぶらないように用心しながら、穴の中を覗けば、彼のよく知る相手がそこにいた。
シャベルを手に泥だらけになって穴を掘っている。
でも、なんでこんなところで?
「あ!エコ」
「なにやってんのさ。ユイ」
「えー?見てわかんない?落とし穴掘ってるのよ」
「落とし穴…?」
「もうちょっとでできあがりよ♪」
満面の笑顔に、少年は肩をすくめた。
「もー、ユイっ!ぼくの家の近くにこんなの掘らないでよ」
「ごめんごめん〜。用事が済んだらすぐ埋めるから!」
「用事って…?」
聞くと、困ったような微笑み。
「うーんとね、その…シンクロをつかまえようと思って」
「へっ…?」
「だ、だって、シンクロってば、最近、あたしを見ると逃げるのよっ!
エコのところにはよく遊びに来てるっていうから…」
「…………」
「うん、だから、シンクロつかまえたら、穴も片づけるからねっ」
そういうことだから!と勢いよく手を振って、穴掘りの作業に戻るユイ。
「えーと………シンクロを捕まえるって…」
あーあ、と額に手をあて、彼は少し後ろを振り返った。
そこにはどうしたものかと焦り顔で立ちつくす男が、一人。
「さーて、こんなもんでいいわね♪ ねえ、エコ〜!
シンクロの好きなものってなにかしら?」
明るい声が元気に響いた。そんな穴の底にいる相手には聞こえない声で少年は呟く。
「…正直に答えていい?」
「エコ…」
牽制混じりの地を這うような声に、苦笑。
「なら、しかたないや」
彼はちょっと小声で何事かを呟き、手を動かした。それだけで、近くに立っていた木の幹がやわらかな縄のように動く。
「おい、エコ!?」
少年は子供の姿そのままに、いたずらっこのような笑みを浮かべた。
「だってさ、ユイにあっちこっち穴ぼこだらけにされたら困るだろ。それに…」
それに、ユイには笑っていてほしいから。
…なんて当たり前のことは言葉にせず、彼は元気よく声を上げた。
「ユイ〜!ちょうどシンクロが来たよ〜っ」
あわただしく、穴をあがってくる音がする。
でも、たぶん、ユイがシンクロをつかまえられるかどうかは、シンクロしだいなのだ。
そうと知っているから、彼はこんな言葉をつけ足しておく。
「逃げるなんて、卑怯でかっこわるいことだって言ってなかったっけ?」
そのセリフがもたらした効果のほどは、はてさて…。
とりあえず、しばらくの間、シンクロに会うたびエコの笑いが止まらなくなったのは確かな話である。
END
うーんと時期はいつでもいいんですけど。前回の続きでも有りですねv
なんとなく途中まで思いついてかき出したので、ラストが悩みました(苦笑
罠のエサはユイちゃん本人で十分ですヨ!な感じが良いかと。
..2005/06/01
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