『クリスマスの夜、二人で食事なんてどうだい?』
 まだ十二月の初めだというのに、そんなコトを言ってきた相手に彼女は少しうんざりした。
 クリスマスなら、おそらくコレクターの仲間みんなでパーティになるだろう。
 楽しい集まりになるだろうそれに彼は出ないつもりなのだろうか。
『その日はみんなでパーティじゃないかしら?コントロル』
 気のない口調で、遠回しに断りの返事を告げる。
 しかし、そんなことでめげる相手ではないコトは確かだ。
『そりゃあ、そっちにも出るさ』
 時間の都合をつけてね。
 その付け加えられた言葉が彼女は気にくわなかった。
 ”二人きり”という状況は彼女にとって苦手なモノの一つだった。
 だから、そのコトにこだわる相手の発言や態度は自然と彼女の気に障る。
『悪いけれど、占いネットの仕事もあるし』
 今どうしても欲しいものがあって、それを探しに出かけたいと思ってるの。
 だから、クリスマスの頃の予定はわからないわ。
 意地悪な気持ちのままに、彼女は口から出まかせのそんなセリフを言っていた。
『じゃあ、その探し物はオレが見つけてこよう』
 絶対、手に入れてくるから。
 そしたら、オレと食事!約束だ。
 そんな風に息巻いて飛び出して行った相手の姿を思い出すたび、彼女はほんの少し後悔した。
 ファンタジー冒険ネットのとあるダンジョンにあると噂されるお宝の一つ。それがどうも未来予測プログラムに関するモノらしいと聞いて、興味を持っていたのは本当だ。
 しかし、それが実際役に立つモノかはわからないし、なにより攻略の難しいダンジョンだという。
 だから、クリスマス当日になってパーティ会場にやってくることもできなかったコントロルにはさすがに悪いコトをしたかも、と思ったのだ。
 しかし…。
「時間に遅れるーっ」
 と相手の都合も考えずに手を引っ張って、一目散に駆けてゆく後ろ姿を見ているとそんな同情心も吹き飛んでしまうから不思議よね、と彼女は思う。
 どうして彼はこうも一方的で、強引なのだろう。
 そう感じるたびに彼女はつい意地悪な気持ちになってしまう。
『いいわ、このまま黙ってついていってあげる』
 でも向かう先はきちんとした正装でなければ入れない高級レストランだったハズ。
 門前払いをくらったコントロルが着替えて出直す頃にはオーダーストップの時間だろう。
 そうしたら。
『そうしたら、まあ仕方ないわね』
 かなり落ち込むだろうコントロルに。
 一応、頑張ってくれたお礼も兼ねて。
 シャンパンで乾杯するくらいなら付き合ってあげてもいいわ。
『約束だから』
「もう間に合わないと思うけど?」
 わざと相手を焦らせる言葉を選びながら、彼女は艶やかに微笑む。
『こんな聖夜も悪くないんじゃないかしら?』


 END