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『あっ』 通りに面したジュエリー店の前。 いつもの癖でふと立ち止まってしまった彼女に、並んで歩いていた男は怪訝そうに振り返った。 「どうかしたか?フリーズ」 「別にたいしたことじゃないんだけどさ…」 ちょっと苦笑して、彼女は目の前のショウウィンドウを指さす。 そこには白と紺のサテン地が敷かれ、アクセサリーの類や見本用にラッピングされた小箱が飾られていた。箱の赤いリボンには「Merry X'mas」と印刷された金の文字が踊る。 いかにもなクリスマス用ディスプレイコーナーである。 彼女はその真ん中に堂々と据えられたクリスタルドールを示した。 「また新しいのがついてたもんだから」 クリスタル製の胸像は美しいイヤリングとネックレスを身につけていた。銀に紫水晶をあしらった上品なデザインの一品だ。 「ホントにキレイよねえ」 思わず感嘆の吐息といっしょにこぼれた呟き。 しかし、それを耳にして、男の顔がピキリと凍りついた。 「おまえ、そ、そういうのが好きだったのか?」 少しうわずった声が焦ったように言う。 「シルバーの方が好きだったのかっ!?」 相手の真剣極まりない顔つきに気圧されながら、彼女はとりあえず首を横に振って、 「あたしはゴールドの方が好きだけどさ。でも、それがなんかあんの?ジャギー」 |
| 不思議そうに問いかけると男は「うっ」と言ったきり、押し黙った。 その様子を見て、鈍感と噂される彼女は肩をすくめる。 「変なヤツねえ。それにあたしがキレイって言ったのはこのクリスタルドールのコトよ!ホントにキレイなのよね、この子。ゴールドでもシルバーでも、どんなアクセサリー付けても似合うんだからうらやましいかぎりよ。この間も金の素敵なピアスしてたんだけど、すぐ売れちゃったみたいだしね」 「…金のピアス?」 「そう。太陽と星をイメージした透かし彫りのヤツで、けっこういいなーって見てたのよね。そしたら、ユイが…」 そこで、彼女はハタと我に返ったように言葉を止める。 『マズイ』 「ユイがどうしたって?」 「あー、そのっ」 「途中でやめられると気になるだろーが」 とっさに背を向けて逃げ出そうとした彼女の腕が引き止められる。 彼女は『まいった…』というように赤くなった顔を片手で覆って、言いにくそうに口を開いた。 「その、たまたまここでユイと会ったんだけど。その時、ユイってば…」 「ん?」 「これ、あたしに似てるって言っててさ。その、も、もちろんお世辞だったに決まってるけどね。いやあ、なんてゆーのか、うれしくてさっ」 照れ隠しに相手の背中をばしばし叩きながら、勢いこんで言う。 「……の………だ」 「え?なんか言った?ジャギー」 切れ切れに聞こえてきた声に、彼女はようやく手を止めた。 見上げた先では誰より赤い顔をした男が横を向いて、あらぬ方へと視線を彷徨わせている。 「ジャギー?」 「だ、だからだなっ…」 「うん?」 「人形なんかより、おまえの方がキレイだし、似合うとオレは思うぞっ」 「…!?」 差し出された大きな手の上に載せられた小さな包み。 「Merry X'mas」の文字といっしょに揺れて震える赤いリボンを、最初はびっくりして見つめていた彼女もようやく何が起こったのか理解して。 「ありがと。ジャギー」 満面の笑みを浮かべ、勢いよくジャンプした。 |
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*End*2* *-----------------------------------------------------* |