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「まあ…」 少し驚いたように目を見張り、彼女は足を止めた。 ちょうど目の前のジュエリー店から一組のカップルが出てくるところだった。楽しそうに笑い合っている恋人たちを見て、そして改めてもう一度、店のショウウィンドウに視線を戻す。 そこにはクリスマス用にディスプレイされたアクセサリーたちが照明の光を受けてきらめいていた。 しかし、なかでも一番輝き、目を引くのは中央に据えられたクリスタルドールだろう。銀に紫水晶をあしらった上品なデザインのイヤリングとネックレスで飾られたクリスタルの胸像。 それを見つめて、彼女は小さくため息をついた。 「予測が外れてしまったみたいね」 「どういうことだ?アンティ」 同じように立ち止まり、ウィンドウを覗き込んでいる男に彼女はくすっと悪戯っぽく笑い返す。 「この前、これを見た時に面白いビジョンが視えたから、きちんと未来予測してみたの。このクリスタルドールは身につけている商品が売れるたび、新しい物をつけられるわけだけど…私の予測ではさっきのカップルが最後のアクセサリーを買うはずだったのよ」 「最後の…?」 男は意味がよくわからないと眉間にシワを寄せる。 「そう、この子がこの店でつける最後のアクセサリー。なぜかというと今日、この子は売れてしまうからなの」 「しかし、これはディスプレイ用で…商品じゃないだろう?」 「そういう無茶をものともしない人が世の中にはいるということね」 |
| くすくす笑う彼女に男は肩をすくめた。 「そうだな。オレだって、君がこれを欲しいというなら、なんとしてでも手に入れてみせるだろうさ」 「あなたならそう言うと思ったわ、コントロル。でも、私はこういうのをもらっても困るだけね」 もう行きましょう、と促す。 しかし、立ち止まったままの男はじっと目の前のクリスタルドールを見つめて彼女に尋ねた。 「今日、これは売れてしまうって?」 「ええ、そうよ。…そのはずだけど、予測は途中で外れてしまったし、どうかしら」 「…………」 「どうかしたの?コントロル」 今度は彼女の方が怪訝な顔つきで男を振り仰ぐ。 男は顎に手を当て、うーむと考え込んでいたかと思うとぽんと手を叩いた。何かを決意し終えたらしく、すっきり爽やかな笑顔で彼女の瞳を覗き込んだ。 「君の予測ではこれを買うのはオレじゃなかったんだろ?」 なにをいきなり、と戸惑いながらも彼女は頷く。 「ええ。それは確かよ」 「じゃあ、オレが買おうっ」 「!?」 理解不能の成り行きに、言葉も出ない。 「ちょっと待っててくれ」 言うや否や、男の姿はそこになかった。 チリンという店の扉についた鈴の音で事態を理解し、彼女は青ざめた。 『なんてことを考えるのっ』 このままでは本来、あのクリスタルドールを買うハズだった人が買えなくなってしまう! あわてて店内に飛び込んだ彼女の耳に男の声が届く。 「あそこのクリスタルドールがつけてるネックレスとイヤリングをプレゼント用に包装してくれないか。ああ、それとも…」 それとも…と小さく笑って男は彼女を振り返った。 「このまま身につけて行くかい?アンティ」 悪戯っぽく笑う瞳に、まんまと自分が騙されてしまったコトに彼女は気づいた。 『未来予測の能力があるっていうのになんてことかしら』 恥ずかしさと悔しさよりも、この出来事の滑稽さがおかしくて。 「こんなに素敵なクリスマスプレゼントは初めてよ。コントロル」 赤くなった頬に手を添えながら、彼女はほがらかな微笑みを浮かべてそう応えた。 |
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*End*4* *-----------------------------------------------------* |