*** x'mas window4 ***-----------------------------------*


「あった♪これですこれっ!」
 ほら、と通りに面したショウウィンドウ指さされ、彼は目を凝らした。
 どうやらジュエリーショップのディスプレイコーナーらしい。
 白と紺のサテン地の上にはアクセサリーの類や見本用にラッピングされた小箱が置かれている。箱の赤いリボンには「Merry X'mas」と印刷された金の文字が踊る。
 しかし、金の髪の少女がそのうちのどれを指さしているのかわからず、彼は眉間にシワを寄せてガラスの向こうを見つめる。
「いったいどれのコトです」
 すると少女はびっくりしたように目を丸くして、ガラスに白い指先を押し当てた。
「ええっ?目の前にあるじゃないですか〜」
「…………」
「ほら、これですっ」
「…………」 
 彼はたっぷり三十秒は沈黙して、
「まさか、このクリスタルドールのことですか?」
 乾いた声で問い直していた。
 ウィンドウの真ん中に据えられた人型のクリスタルドール。
 ディスプレイ用の胸像は本来、イヤリングやピアスで耳元を飾り、華やかなネックレスで首元を飾るのだろう。しかし、ちょうどそれが売れてしまった後なのか、今は余分な飾りもない。
 それでも、照明を受けたクリスタルドールは華やかにきらめいていた。
 少女はにこにことうれしそうに頷く。
「フリーズさんに似てると思いません?キレイですよね〜♪」
 彼は思わず額を押さえていた。
「……………で?」
「で…って?」
「あなたはっ、まさかコレが欲しいと言うんじゃないでしょうね」
 ディスプレイ用のそれはもちろん売り物ではナイ。
 苦々しく言う彼に、少女にますます無邪気な笑みを見せる。
「まさかって、ここまで来てなに言ってるんですか〜♪ウィルスさん。わたし、これがいいです♪」
「コレのどこが、最新保護プログラムのデータよりいいんです」
 深いため息。
 少女は少しムキになって言った。
「欲しいものならなんでもいいって言ったじゃありませんかっ」
「必要で欲しいと思うものなら、という意味です」
「もちろん必要だから欲しいんですわ。ほら、医療センターのロビーに飾ったら、みなさん、見て喜んでくださるでしょうし」
 徐々に顔に血を上らせる少女を見つめ、彼はもう一度ため息をつく。
「わかりました」
 え?と少女が目を見開いた時には、彼はもう店の扉に手をかけていた。鈴の音に「すぐ戻ります」と声が重なる。
「ウ、ウィルスさん!?」
 目の前で、店員によってクリスタルドールがウィンドウから運び出されるのを見ながら、少女は耳まで真っ赤になっていた。
「絶対、反対なさると思ってましたのに…」
 恋人へのクリスマスプレゼントに最新保護プログラムのデータなんて、彼らしいといえばそうだけれど。
 やっぱり少し腹立たしくて、無理とわかって言ってみたワガママ。
 なのに…
「どうしましょう〜」
 店を出てきた恋人をどんな顔して出迎えようかと今度は少女が本気で困る番だった。


*End**
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