コントロルの言葉はどれも彼女の感情を乱すモノだった。
胸の奥に渦巻くこの感情はなんなのだろう?
こんなにも苛々して、腹がたつのはなぜ?
軽く吐息をついて、彼女は胸に手を当てる。
『オレはいつだって君を守りたいと思っている』
そう言われて感じたのは”ありがとう”と感謝する気持ちと。
それ以上に”あなたに守られるほど弱くはないわ”と反発する気持ち。
『君は強いよ』
その言葉には”そう努力しているのだから当たり前だわ”という想い。
そして、それ以上に言いようのない怒りを覚えた。
でも、私は何に対して怒りを感じたのかしら?
コントロルの言葉がただの気休めにすぎないと思ったから?
それとも…?
『君は弱いな』
もし仮に、彼がそう言っていたとしたらどうなっていただろう。
指摘された弱さを、さらに非難されるコトに怯えを抱いたかもしれない。
そして、私は”そんなことないわ”とやっぱり反発したのかもしれない。
『それでも…』
私は彼にそう言ってもらいたかったとでもいうの?
まさか、と彼女は口の中で呟く。
『もし、そうだったのだとしたら、私は…』
「アンティ?」
怪訝そうに覗き込んでくる視線を避けるように、彼女は顔を背けた。
頬が、熱かった。
「な、なんでもないわ、コントロル」
自分でも声がうわずっているのを感じて、苦笑する。
『本当になんてことかしら』
自分の弱さを誰にも気づかれたくないと思いながら。
本当はそのコトを誰かに気づいてほしいと思っていたなんて。
『いくらココロの産物とはいえ、矛盾しすぎているわ』
しかもそれは自分勝手な想いに違いなくて。
そんなもので相手を振り回してしまったコトを申し訳なく感じてしまう。
「あの…コントロル」
今日は本当にごめんなさい。
謝罪の言葉にしかし、コントロルは不思議そうに首を傾げた。
「なぜアンティが謝るんだ?」
「…………」
本当にわからないのかしら?
それとも、わざとなの?
『何をどこまでわかっていて、彼は言葉を選ぶのかしらね』
そんな憶測などまったく無意味なコトかもしれないとわかっていても。
それでも目の前の相手を素直に受け入れられない自分に、彼女はこの時初めて気づいた。
「アンティ?」
自分自身の情けなさに対する怒りや、悲しみ。
それを故意か無意識なのか、刺激してくるコントロルを彼女は初めて”不快な存在”と認識した。
『仲間なのに…?』
そう思うものの、一度気づいた気持ちはよりはっきりとカタチになるばかりで。
『そう…私は彼が”嫌い”なんだわ』
彼女は一つの結論を導き出す。
そして、その答えは不思議なほど彼女のココロの波を静かなものに変えた。
嫌いだから、反発もすれば、言葉の裏を探るようなマネをしてしまうのだ。
わかってしまえばなんて簡単なコト。
「今日は誘ってくれてありがとう。コントロル」
楽しかったわ。
「それならよかった」
いつになく、じっと見返してくる相手に作りものの言葉と笑顔を贈る。
しかし、もはや彼女にとって隠した自らの本心を気づかれるかどうかなどどうでもよいコトだった。
『だって、私はコントロルが嫌いなのだから』
嫌いな相手に自分が嫌われようと構わない。
なにより、考えたくもない。
「それじゃ、また」
「ええ。また…」
まるでココロの中に冷たい氷のカケラが紛れ込んだようだと思いながら。
彼女は静かに微笑んだ。
END |
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