気がつくと目がその姿を追っていた。
つややかに輝く深い翠の髪。
目に見えないモノを見据えるかのごとく神秘的な光を宿した瞳。
人為的な手が加わっているためか、整いすぎるほどに整ったその容姿。
そして。
そのすべてを美しいと感じている自分に気づく。
『美しい?』
一般に、美的感覚は人によって千差万別だと言われる。
しかし、犬養博士によって作られた自分の美的感覚は彼に由来するのではないだろうか?
博士が美しいと定めてインプットしたモノだから、自分はそう感じる?
共に戦う仲間の一人を特別視してしまうのも、彼が仕組んだ?
それはかなり有り得るコトだと思う。
理由などわからないが、そんな操作は創造主にとって造作もないハズだ。
この体も。
心も。
自分の存在すべてがデータの積み重ねでしかないのだから。
そんな当たり前の事実に不快感を覚える自分に対し、彼は苦笑する。
不快。
反発心。
確かに感じるその感情もまた、あらかじめ定められていたのだろうか?
『ならば…』
やはり、自分には創造主の意図をはかるコトなど不可能だ。
もし、自分が創造主であるなら、調和を乱す要素をあえて付け加えたりはしたりしない。
逆に不快感や反発心といった不安定要素が芽生えぬよう予防策を講じるだろう。
『どこからどこまでが仕組まれたコトなのか』
問いの答えは明快すぎる気がした。
『すべて』
だとしたら。
ふと向けられた笑顔に浮き立つような気持ちも。
言葉を交わす間に感じる心地よさも。
そのすべてが自分のモノであって、そうではないというコト。
それは言いようのないほど腹立たしく、絶望感さえ抱く事実、だった。
『それでも…』
そんなコトなどわかっていても。
自分は無意識のうちにただ一人の相手を目で追う。
そして、至福の瞬間を味わうのだ。
『まさに愚か者だ、な』
自分は救いようがないほど滑稽なコトをしているのかもしれない。
しかし、もはや今の想いを失うことができないのも確かだった。
彼は呟く。
『いいさ』
そう、いいだろう。
たとえどれほど苦い思いをしようと。
”幸せ”を自分は確かに知るコトができたのだから。
『俺は幸せなのだから』
END |
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