自分の能力がどういったものであるのか。
 どんな風に必要とされるのか、シンクロはよく理解しているつもりだった。
 そう、コムネット世界を混乱に陥れようとするグロッサーを倒すためにコレクターたちすべての能力を一つに統合するのが彼の役目だった。
 コレクター一人一人の存在を吸収し、消失させる。
 それが自分の生まれてきた理由。
 そのコトに疑問を抱いたこともなければ、異議を唱える気もなかった。
 グロッサーとの戦いが終わった今でもその気持ちは変わらない。必要となれば、自分は迷わず己の役割を果たすことだろう。
『迷わずに…』
 呟き、彼はため息をついた。
 そして、付け加える。
 あの元気な少女の涙さえなければ。
 自分はためらいなどしないのだろうが、と。
『ユイ…』 
 不思議な少女だと思った。
 グロッサーに操られて敵対していた時も、そして今でもそう思う。
 彼女は相手がたとえ敵でも、迷わず救いの手を差し伸べるココロを持っていた。
 無鉄砲で。
 己の実力を考えず、感情のままに突っ走る。
 それは見ている方が危なっかしいと感じるほどなのに、”救い”になるのだ。
「あ、いたいた。ワンちゃん」
 うれしそうに弾んだ声が聞こえ、彼は毛皮に覆われた耳をぴくりと動かした。
 ”ワンちゃん”というのはグロッサー四天王だった時、ユイが勝手につけた呼び名だった。
 だから、正直なところ耳にするたび不愉快な気持ちに捕らわれた。
 それでも…。
「よお。ユイ」
 明るい笑顔を見せてくれる少女を前にすると、たかが名前一つどうでもいいような気がした。
 雪山スキーネットでユイと二人遭難しかけた時、改めて感じたコトがある。
 自分にとってこの少女は本当にかけがえのない存在なのだと。
 もしかしたら、同じコレクター仲間であるという以上に。
 自分の命などどうなってもいいと思えるくらい大切なのだと思い知らされた気が、した。
『こんな風に誰かを大切だと感じる気持ちはどこからやってくるんだろうな』
 彼の能力はコレクターたちを統合するコト。
 そうして一つに同調するために彼は個々のコレクターとの波長が合いやすく作られていた。
 特に意識して能力を発揮せずとも、ユイ以外のコレクターの気持ちなら感じ取ることができたのだ。
 だから。
 ユイを大切だと思うこの気持ちは。
 みんなから分け与えられた想いが膨らんだモノではないかと。
 彼はそんな風に考えるのだった。


 END