* twelve window1 +from gensui *

「おい、そんなとこで何してんだ?グレミオ」

 緑萌える木の下でぼんやりと佇んでいた青年はその呼び声にゆっくりと振り返った。手には落葉樹の葉が一枚。
 指でつまんだ茎を回すと緑のそれは手の中でくるりと踊る。
「ちょっと昔のコトを思い出して、ぼーっとしてました」
 穏やかに微笑む青年に相手は自分の口元を指さし、
「口が弛んでたぜ。面白れぇ話なのか?」
 からかうように笑いながら、木の下へと近づいた。
「面白いかどうかはわかりませんが…」
 青年は少し困ったように首を傾げ、そして、小さくクスッと笑う。
「ナマで食べられる野菜はともかく…こういう葉っぱっておいしくないんですよね〜」
「はあ?」
「いくらお腹が空いててもマズイとかって思えるんだから、人間の味覚って遠慮がないと思いませんか?ビクトールさん」
「………なんでそーいう話になるんだ、オイ」
 呆れ顔の男に青年は肩をすくめる。
「だって、昔、そう思ったんですよ」
 こんな木の下で。
 お腹が空いて空いて野垂れ死にしそうになって。
「そうしたら…」
 と、青年は輝く金の髪にも負けぬ明るい笑顔を浮かべた。
「おにぎりを一つ、くれた人がいたんです。それがものすごくおいしくて幸せで…う〜ん、言葉じゃ言い表せないくらい幸せだったんですよ♪」
 そのあまりにも満ち足りた表情に男は苦笑しながらも、
「よかったな」
 馬鹿にするでもなく、ただ静かな口調でそう応えたが…。
「というのが、わたしと坊ちゃんとの出会いだったんですよね〜」
 続くしみじみとした青年の呟きに、
「ちょっと待てい!」
 と待ったをかけずにはいられなかった。

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