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とんとんと木槌を打つ音が一定のリズムを刻んで響く。
その部屋では一つ一つ長さを測って切りそろえられた木の板が手際よく組み立てられていた。
そして、仕上がりを見た彼は満足そうに息をつく。
「我ながらナイスな出来だぜ」
手足を伸ばして眠れるように十分なゆとりを持った木製のベッド。両手で揺すってみて、その頑丈さをもう一度確認する。
「よし、これならたいがいのモンも大丈夫だろ」
そこに意外な声が響いた。
「お?こんなところでなにしとるんだ。ゲン」
「なにって見りゃわかるだろ。ベッド作ってんじゃねえかよ。じじい」
開いていた扉からひょいと顔をのぞかせ、声をかけてきた相手にゲンはしかめっ面で応える。
すると腐れ縁ともいえる馴染みの相手は、
「そんなもんわかっとるわ。なんでこんなところでベッドなんぞ作っとるかと聞いたんだ」
遠慮なく部屋に入り込み、そう問いかけた。
「なんでって、頼まれたからに決まってんだろ」
「この部屋の…ビクトール殿にか?」
がらんとした何もない部屋を見渡し、首を傾げながらカマンドール。
「いや、依頼主はアイリーンさんなんだけどよ。なんでも前のはボロボロで風呂のたきつけにしたんだと」
「ほお」
しかし、カマンドールの興味はすでに自分で聞いたコトより、ベッドそのものに移ったらしい。ひたと視線を定めたまま、ベッドに見入っている。
「おい、カマンドール?」
「なんだか創作意欲がわいてきたぞ!ゲン」
「はあ?創作意欲〜?」
いきなりこぶしを振り上げたカマンドールにゲンは眉をひそめた。
「だからな…ここをこうして…だ」
どこから取り出したのか紙を広げ、設計図のようなモノを書き始める。
「どうだ?」
「ふーん、まあ悪くねえ案だな」
そうしてちょうど話し込んでいたところにからくり師のジュッポが通りかかり、『よりよい理想のベッド』の追求が始まる。
「よっしゃ、完璧だ」
そして、昼過ぎには仕上がったベッドのほか、調度品一式を揃え終わった部屋の様子はその場にいる誰もが満足する出来だった。
ベッドには総レース仕立ての布団と枕。
部屋の隅に置かれた壺には山ほどの赤いバラを。
ついで用意された本棚には難しい哲学書が並べられた。
「素敵ですわ」
物事をやり遂げた達成感に感嘆の吐息で応える女性へ全員が同意する。
「あやつにはもったいないくらいの部屋だな」
が、それが部屋の主本人にとって幸か不幸かは誰も知らぬ−−−いや、誰にとっても、もはやどうでもいいコトであったにちがいない。
END ・ +α |
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