-------- 疑惑  大佐side ----------





いつもそばにいても、互いの感性の違いにしばしば驚く。

恋人同士。

それを周囲に隠すのにはそれなりの理由があった。
同じ職場でのそれは業務上に支障が云々と言われるに決まっていたし、
だからといって、どちらかが転属させられたのではたまったものではない。
それはよく理解している。

でも、時々思うのだ。

自分の方が嫉妬心も独占欲も、彼女より強い。

かといって別に浮気の心配などしたことはない。
性格的にそういうことをしない女性だともわかっていた。

ただ。

時折、部下たちに見せる笑顔とか。
やさしい気遣いとか。

そういうのを見ているとイライラした。
二人きりで過ごす時間を別にすれば、
公の場で彼女がそうした面を自分に対して見せることは
…ほとんどない。


だから。

道を歩いていて

「お二人はすでにご結婚されてますか?」

なんて聞かれた時は内心、とても嬉しかったのだ。
私服姿だったし、恋人同士にでも見えたのだろうか?
たとえ見知らぬ他人からの言葉でも。
なんとなく心弾む言葉。


それを何も
「この人は単なる上司です」
なんて、すげない一言で終わりにしなくてもいいと思うのだ。
声をかけた方もびっくりしている。

しかし。

「そ、それはすみませんでした。
あの、只今、当方で挙式無料体験というのをやっていまして
その、モニターにと思ったのです」

戸惑いながらもそこまで言ったのは偉かった!
挙式&無料体験という言葉に思わず引き込まれていた。

「その無料体験というのはどういう…」
「大佐、あなたには結婚より先にすることが他にあるでしょう」

それは確かにそうなのだが。
無理矢理引きずられるようにその場を離れながら、
ひどく悔しいような悲しいような気分なるのはどうしようもなかった。


「わたしはただ、君の花嫁姿が見たかっただけなのだが」
「とうぶん無理ですね」
「とうぶんって?」
「それはあなた次第でしょう?」


事実なのだが、憎らしいセリフ。
ウェディングドレスを着るくらい、別にいいだろうに。
そう、無料体験なのだ。
仮に周りに騒がれたとしても
ただ試しに参加してみただけだ!と言い訳すればいい。
それ以上のことはその時になって考えよう。

楽観的すぎるという自覚はあった。

が。

たとえウソで終わるとしても
一度くらい
彼女が自分のモノなのだと主張してみてもいいハズだろう?


綿密に、周到に計画を立てて
彼女を罠にハメてみる。

しかし。

それ相応の仕返しは覚悟していても、イタかった。

「どうせなら、この人も」


黙ったまま
笑顔で
手痛いしっぺ返しをくらわせる。


そういうところが彼女の魅力でもあるのだが、
この時ばかりは目眩を覚えた。


でも、まあ、彼女の貴重な花嫁姿が拝めるなら良しとしよう。



あとはそう…
このお邪魔虫さえ消してしまえばいいだけなのだから。

中尉side