*** eleven window2 * from yui ***-------------------------*


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 明るい色の花束を大事そうに胸に抱いて通りを歩いていた少女は、ほんのすぐそばから降ってきた声に驚いて顔を上げた。
「ずいぶんご機嫌だな。レスキュー」
 そこにいたのは見上げるほどに長身の青年だった。
「あらあら、シンクロさんじゃありませんか〜」
 ホッとしたように片手を胸に当てて、笑顔を返す。
「いきなりでびっくりしましたわ」
「そいつはすまん。だが、横を通り過ぎても気づかないってのは…そんなにオレは存在感が薄いか?」
 肩をすくめておどけるように言う青年に、少女はくすくす笑った。
 片目をつぶって覗き込んでくる様子からも相手の言葉がただの冗談だとよくわかる。
「ごめんなさい。ちょっと考え事してましたの」
「考え事ってのはそいつのことか?」
 そいつ、と花束を指さされ、少女は頷く。
「これをあげたらどんな顔するかしらって思ってましたの♪」
「それは…」
 誰にあげるのか、とは青年も聞かない。
 ただ難しそうに眉間にシワを寄せて、ちょっと困った顔つきになる。
 しかし、そんな彼が何か言いかけようとする前に少女は素早く制止をかけていた。悪戯っぽく瞳を輝かせ、唇の前に人差し指を立てる。
「わたしのじゃなくてシンクロさんの予想が当たったりしたら悔しいから、言っちゃダメです♪」
 そして、ふと何か思いついたように少女は「あっ」と小さく声を上げ、ポケットから細長い紙片を二枚取りだした。
「そうそう、ちょうどよかったですわ♪ コレ、わたしたち予定が合わなくて行けなくなったんですよね〜。良かったら使ってくださいません?」
 手渡された紙片を覗き込み、青年は戸惑うように首を傾げる。
「本当にもらっちまっていいのか?」
「はい♪わたしにはこれがありますから、いいんですv」
 そう言って、少女は小さな花束を掲げてみせた。


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