陽気な口調で話を続ける相手に彼女は適当に相づちを打っていた。
「というわけで、アイアールがだ…」
ウェスタンネットの酒場に入りながら、彼女と同じくオレンジジュースを頼んだコントロルは実に楽しげにここ最近あったコトを話して聞かせる。
しかし、アンティの意識は話の内容より、目の前のコントロルという存在自体に移っていた。
いつも何かがあると…いや、何もなくてもよく自分を訪ねてくる彼の真の思惑はなんだろう、と。
それはずっと気になっていたことでもあった。
”バラの花束を抱えて恋人をデートに誘う”
そんな一昔前の映画のワンシーンを装って現れるコントロル。
しかし、二人は恋人同士でもなければ、ココロを持つとはいえ所詮はコンピューターのプログラムソフトにすぎない。
人間のように恋や愛といった特別な感情まで芽生えるかといえば、どうかしら、と彼女は思うのだ。
現に彼女にとってコントロルは大切な仲間以上でもなければ、それ以下でもなかった。
だからこそ、ふと思ってしまうのだ。
もしかしたら。
もしかしたら、彼は自分を見張るためにやってきているのではないか、と。
彼の能力はコレクターすべての統率をとるコトだった。
今となってはその役目のほとんどをユイにとられ、彼の存在価値は仲間たちの中でも一番あやふやになっていると言えたかもしれない。
それでも、彼がコレクターであることには変わりはない。
その本来の能力も目に見えるところで発揮されていないだけで、消去されたわけではない。
”コレクターたちを統率するコト”
それは言い換えれば、”コレクターたちが誤った道を進まぬよう、一定の方向性を持たせるコト”ではないだろうか?
そして、そんな彼が自分の元に頻繁に現れるということは…。
アンティは唇を噛んだ。
「ねえ、コントロル」
「天気がよくて…って、え?」
いきなり話を遮られ、不思議そうな顔をしながらも彼は「なんだい?アンティ」と律儀に返した。
静かに澄んだ色の瞳。
その奥に隠されているモノがなんなのか、アンティには見通すことができなくて。
苛立ちが口をついて出ていた。
「あなたの目に私ってそんなに弱く見えているのかしら?」
問いながら、細いため息をつく。
コントロルは突然の問いの意味を図りかねた様子で彼女を見ていた。
それでも。
アンティの未来予測能力は彼が口にする答えをすでにはじき出していた。
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